2013年1月8日火曜日

顧客に貢献できる長所や能力は何ですか?


 経営支援にあたる人たちが、企業の経営者らに「コンセプトを明確化すべきです」「差別化を図ることが大切です」と言っているのをよく耳にします(私は言いません。言ってできることなら百回でも言いますが…)。

コンセプトは、いわば「新しい価値の提案」であり、差別化とは要するに「お客様に、より良い価値を提供するために、他社とは違った行き方をする」ことですから、両者はじつは不即不離・不可分のもので、彼らが言うとおり、その重要性は疑いありません。

経営資源に乏しい中小企業者にとっては、よりよく貢献できる相手(=標的顧客)に全力で奉仕することこそが、社会の役に立ち、ひいては企業が存続・成長することへとつながるといえます。

では、「コンセプトを明確化すべきです」「差別化を図ることが大切です」と助言する人たちのコンセプトなり、差別化のポイントは何なのでしょうか?

「あなたは自分のどのような長所や能力を生かして顧客に貢献しますか?」と問いかけてもいいかもしれません。

 よく返ってくるこたえは、特定の業界での実務経験や特定の経営手法に関する豊富な知識がある、といったものですが、こたえになっていないと思います。「では、特定の業界や特定の経営手法以外では、貢献できないわけですね?」と反問したくなります。

相手の話をよく聞き、相手の身になって支援します、というこたえも同じ。「では、あなたはお客様第一主義というのがストアコンセプトになりうると思うのですね?」と聞いてみたい。「うちは八百屋だけど納豆も置いてます!」程度の差別化にしかなっていないと思います。

 「誰かの役に立ちたい」と思っている人は多いけれど、「自分のどのような長所や能力を生かして相手の役に立つのか?」ということに関しては、意外と無頓着なのが本当のところではないでしょうか。

 たとえば、受験生に勉強を教えてあげよう、というケースを考えてみると、貢献のポイントとして、

この事柄は、試験ではどのような問われ方をするか(出題パターン)を教える
覚えなくていいのはどこで、覚えなくてはいけないのはどこかを教える
事項相互の関係をどう理解すべきか、全体構造を図解する
覚えにくい暗記事項をうまく覚える方法を伝授する
応用の利く解法パターンを教える

というようなことが思い浮かびます。

これらの全てを網羅するのは当然無理としても、指導内容がこれらのうちどの部分に力点を置いたものかというのは、指導する側が自分ではっきり認識し、できれば指導される側にも事前に示しておくべきでしょう。

指導される側も当然、指導のコンセプトを知りたいはずです。なぜなら、コンセプトの魅力度によって指導を受けるかどうか決めるわけですから。

コンセプトが求められるのは、決して企業経営の中だけではありません。「コンセプトの重要性」を語る人たちが、コンセプト不在の行動をしているとしたら、それは『論語読みの論語知らず』の誹りを免れないでしょう。


0 件のコメント:

コメントを投稿