「ポスト円滑化法」体制に向けて、中小企業支援制度はさらに充実度を増しつつあるかに見えます。商工団体、金融機関、行政機関、大学などの教育研究機関、民間コンサルタントなど、さまざまな人たちが、自分の担当職務や得意分野において、中小企業に多様な支援を提供しています。
ところが、この「中小企業支援の充実ぶり」が、中小企業の適正な経営の方向づけをむしろ阻害している面がないでもありません。端的に言って、助成制度の乱立が経営者を地道な経営努力から遠ざけてしまっている面は決して否めない気がするのです。
「中小企業支援≒補助金」とも言える環境下では、経営者の意識を事業そのもののブラッシュアップと実践に向けるのに苦慮することがあります。経営者が補助金を獲得することにエネルギーを傾注し過ぎ、肝心の事業そのものがおろそかになったのでは、何のための支援かわからなくなるからです。
大変残念なことですが、本来「会社経営をバージョンアップするためのロードマップ」であるはずの経営計画が、助成金獲得や資金調達のための作文と認識されているケースは決して少なくありません。中小企業支援に関する専門的資格者である中小企業診断士も、半ば「助成金獲得のための代書屋」と見られている節もあります。
関係者ならばご承知のことでしょうが、数年間続いた「巡回アドバイザーバブル」「専門家派遣バブル」が崩壊とは言わぬまでも、大きな転換期を迎えつつあることは疑いないところです。
このような環境下、中小企業支援に携わる私どもは、今後、経営支援の専門家としての能力・経験とともに、その品性をもあらためて問われようとしています。『助成金獲得のための代書屋に甘んじるのか』と。
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