先日、スポーツ精神の未熟と過度の経験主義があいまって招く悲劇について書きました。
経験主義が跋扈するのは、もちろんスポーツの世界だけではなく、私が身を置いている中小企業支援の世界も同様です(幸い、経験以外のところで評価を行う能力と見識のある人たちもおられることが救いです)。
私の見るところ、経験至上主義の人たちには、ふたつの共通項があります。
ひとつは、自分が不十分な知識経験しか持たない領域では、経験者の見解を何の疑いも持たず全面的に受け入れること。
もう一つは、非経験者の意見にはきわめて冷淡・無関心であることです。
「物事の適否を判断する自信がないから、経験に寄りかかるんじゃないの?」と疑いたくなってしまいます。
そもそも、経験が重んじられる理由は、豊かな経験からもたらされた「経験知」には表面的な知識やノウハウ(知識知)にない大きな価値があるからにほかなりません。
中小企業支援に即して言うなら、例えば次のようなことでしょう。
本件支援のパースペクティブをどう描いたのか。それはなぜか。どのようなツールを用いるのか。その狙いは何か。次のステージに移行することの可否をどこで見極めるのか。表面的な課題の下に見え隠れしている真の課題にどう接近していくのか。
これらのうちある程度は、知識知で説明がつくものですが、それだけでは割り切れないところが少なからず残ります。わかりやすいのは、数ある分析ツールの中から、直感的に「本件に適用するツールはこれ!」と選び出すところでしょう。
このような「経験知」は、漫然と場数を踏んだだけでは得られないものです。「経験知」が経験値(ゲーム用語か?)に比例すると認識しているとしたら、それは誤りだと思います。
痛くない注射針で知られる岡野工業の岡野雅行氏は、大企業の担当者に「おたくには技術はあることがわかったが、実績がないから…」といわれて、こう返したそうです。
「あんた、女房もらう時も実績で決めたのかい?」。
当然、大げんかになりました。その後、先方から取引したい申し出があったときの彼の返事はさらに奮っています。
「無理だよ。おたくの会社にはうちとの取引実績がねえじゃねえか」。
経験者・非経験者などという表面に惑わされず、実質を捉える目を養いたいものですね。
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