2013年7月1日月曜日

「ブルー・オーシャン」はあるか?

 競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン」と規定し、競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン」を切り開くべきだと説く「ブルー・オーシャン戦略」。

 今では、もうめったに語られる機会がなくなりました。しかし最近私は、よくこの言葉を思い出します。「ブルー・オーシャン(競争のない新たな市場空間)って、本当にあるんじゃないかな?」としばしば思うのです(もとより、眼前に青く広がる海など知りません。青い入江をときおり垣間見るだけです)。

 顧客ニーズに関し「ドリルを買いたい顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しいのだ」というフレーズがよく引用されます。
 「ドリルをください」というお客様の求めの先にある真の需要を見出すことで、より真の需要に即応した新たな提案が可能になる、という教えなのでしょう。その趣旨に異論はありませんが、これは飽くまでレッド・オーシャンの発想だと思います。

 ブルー・オーシャンでは、お客様はむしろ自分の真の需要に忠実です。
 先のフレーズになぞらえて言えば、お客様はそもそもドリルという道具を知らないし、ドリルがホームセンターで売っていることはなおさら知らないからです。「あのね、壁に径9ミリぴったりの穴を開けてフックを取り付けたいんだ」。あるいはより直截的に「リビングルームに絵を掛けたいんだ」と相談するかもしれません。

 そのとき相談者を困惑させるのは、相談した相手から「あなたが何を欲しているのかわからない。要するに何が必要ですか?」などと問い返されることです。相談に行ったら「話を整理してまたお出で下さい。」と言われた、という話はよく聞きます。
 相談した相手が知りたいのは、「真の需要」ではなく、「ドリル」という商品名であった、というじつに残念な事態です。

 端的にいえば、依頼を受けた側が「はい、わかりました」と即答できるような仕事は、すでに真っ赤に染まっています。そこまで至らなくても「具体的なサービスメニュー」を第三者が理解可能な表現で示すことができた時点で、もう赤い色に染まりかかっていると言えそうです。

 依頼する側も何をどう依頼したらよいかわからないし、依頼を受けた側も何をどのようにしたらよいかわからない、というケースは、今後も増え続けるでしょう。しかも、そこには依頼者の知らないさまざまな制約条件もあるはずです(その制約を正しく理解し、依頼者の目的達成に貢献できる人のことをプロと言うのでしょう)。

 このようなケースでは、「目的達成のために必要な要素は何で、その要素はどの程度のクオリティで、どのように獲得していけばよいか」を議論しながら組立て、確認していく『ワークショップ形式』をとるほかないと思います。依頼者の持っている情報は、タスクを遂行する上では不足であり、しかも不必要な情報を多分に含んでいるのが通常であることも銘記すべきです。

 そして、そのためには、

 1 業際、学際にわたる幅広い知識と思考の枠組みを身につけておくこと。

 2 論点を整理しながら議論を進め、それを「見える化」するスキルを身につけておくこと。

が欠かせないような気がします。

 何より、誰に頼めばいいか、何と頼めばいいかわからないような事柄について、「まずあの人に相談してみよう」と言われる存在になりたいものですね。






0 件のコメント:

コメントを投稿