イノベーションとは、必ずしも技術革新によるものではない。顧客にとってのイノベーションは、案外とローテクなものである場合が多い。
組合せの妙や、デザインの先進性、そのベースとなるスタイルやシーンの提案、つまりは夢が重要なのだ。そのためには情報量の違い、それも知識ベースではなく、経験ベースの情報量の違いが必要になる。
対象となる顧客の一歩も二歩も先を行く経験をどれだけ積んでいるかによって、顧客にどれだけ驚きを与えることができるかが決まる。それがマーケティング的に見たイノベーションの源泉だと思う。
しかも、一般的な顧客の心をとらえるためには、そのピラミッドの頂点に君臨する先端的な顧客の心をまず捉えなければいけない。スポーツの世界で、一流選手の愛用するグッズにアマチュアが憧れるのと同じ道理だ。
(嶋口充輝他「やわらかい企業戦略」角川書店2001)
新製品開発に躍起になる企業は多いですが、「そもそも想定される需要者(あるいは世の人々が)が本当はどんなニーズ・ウォンツを有しているか」についての探求に熱心な企業は、あまり見られない気がします。
経営者のみならず、むしろマーケティングに関しては専門家とも言える中小企業診断士すら、ある業種・業態の研究をする時に「想定される需要者が本当はどんなニーズ・ウォンツを有しているか?」という視点からアプローチすることは、実は少ないのではないでしょうか。
顧客第一主義とか、マーケットインと口では言いつつも、自分中心にしか考えられないのは、われわれ人間の生来のDNAなのかもしれません。
しかしながら、せめて「イノベーションとは、企業にとってのイノベーションではなく、顧客にとってのイノベーションである」ことは銘記しておきたいものです。
ある属性の人たちは、どんなバックグラウンドを持ち、何を大切に思っているのか。この商品(サービス)で何をするのか。それはなぜか。どこを充実させたら商品(サービス)の評価が上がるのか。これまで利用してこなかったのはなぜか。
これらを豊かにイメージすることなしに、コンセプトもターゲットもないように思います。
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