2012年3月30日金曜日

隣接周辺業務開発の端緒

 隣接周辺業務開発は、あくまで「われわれ不動産鑑定士のどのような保有能力を誰のためにどのように役立てることができるか」という問いかけを端緒とすべきであると思います。


 「消防法を改正すれば報知機の需要が増えるはずだ」「ケアマネージャーの資格をとったら商売に有利なはずだ」といった「売り手中心」の発想は、どのような業界にもしばしば見られることですが、今日のような買い手優位の時代、「買い手の立場」を考慮しないことは、ビジネスチャンスを見出すことを著しく困難にするからです。

 先日、接遇マナー講師の方から、このようなお話を聞きました。
 彼女は、スーパーなどにイベント販売などの臨時店舗を出している人の業務終了後の後片付けの様子をよく観察するそうです。お店をお客様が買い物を楽しむ場所だと捉えていれば、自ずとお客様に配慮した後片付けになる。しかし、お店を自分が商品を売りさばく場所だと認識していれば、自分の商売が終わったと同時に、お客様は眼中になくなる…それが後片付けの様子に現れるというのです。

 われわれ不動産鑑定士にとって、お客様(依頼者)は「お金を払ってくれる人」でしょうか。それとも「何らかの利益をもたらすべき相手」でしょうか。
 これまでの隣接周辺業務開発の議論は、「お客様にどのような利益をもたらすか」、その前提としての「お客様はどのようなことに困っていたり、不満だったりするのか」という視点が欠けていたように思われてなりません。需要機会を考えるにあたって、ユーザーの声を聞こうというアプローチをまったく欠いているのは、そのせいであるようにも思われます。
 
 情報技術の飛躍的な進歩により、グループインタビューなどフェイスブック上でもできてしまう時代になりました。
 新業務開発=新しい便益の提供をほんとうに志向するなら、顧客が従前の鑑定評価の枠組みに何が余分で何が足りないと感じているのか、不動産に関してどんな助言や支援がほしいと考えているのか、それを引き出す努力が必要なのではないでしょうか。
 (2011.5.22)

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