2013年9月17日火曜日

真田広之に学ぶ「口出しの仕方」

 現在、劇場公開中のアメリカ映画「ウルヴァリン:SAMURAI」(ジェームズ・マンゴールド監督)に重要な役どころで出演されている俳優の真田広之さんは、その制作過程で、煙たがられることは覚悟の上で、撮影スタッフに殺陣や時代考証について、思ったことをどんどん口出ししたそうです。

 もちろん映画「ラストサムライ」での実績あってこそのことでしょうが、「いい映画にしたい」「日本の描写を珍妙なものにしたくない」という彼の熱意はスタッフに伝わり、ついには事前に衣装やセットの図面を見せられ、意見を求められるようにもなったとのことです。

 テレビでのインタビューによれば、撮影中次のようなやりとりもあった由。

 スタッフ 「(剣術の)道場のセットの図面だ。おかしいところがあったら指摘して欲しい。」
 真田 「床に貼ってある格子状のものは何かな?」
 スタッフ 「ああ、それはタタミシートだ。」
 真田 「(そりゃ柔道だよ、と思いつつ)タタミはダークな色合いのフローリングに代えてくれ。」

 彼の話で印象に残ったことがふたつありました(一言一句正確ではありません)。

 ひとつは「口出しの仕方」について。

 『他人の作品や持ち場に口出しすることは、重大な越権行為で、本来は許されないことです。でも、言い方さえ間違えなければ、相当なところまで受け入れてもらえると感じています。』

 もうひとつは「助言者が持つべき視点」について。

 『専門家だと『これはあり得ません』で終わりになってしまう。映画作りの事情、ハリウッドの人たちのイメージも尊重して折衷案を提示できる人間が実はいないんです。』

 よりよい実践に貢献するという助言の目的を達するためには、相手に受け入れられなければいけません。ならば、相手が助言を受け入れやすくする工夫は不可欠です(その工夫とは、相手に恥をかかせたり、徹底的にやりこめたりすることでは決してないでしょう)。

 また、現時点で実行困難な理想論を説いても、よりよい実践につながることはまずありません。お料理に例えれば、帝国ホテルのレシピを完璧に伝授されるより、いま冷蔵庫にある材料で(その人が作れる)なるべく旨いメニューを教えてくれるほうが、よほど有難いわけです。

 かくいう私自身の助言が、はたして十分これら二点を踏まえたものになっているだろうかと考えると、はなはだ疑問。
 今日は、思わぬところで反省の機会を得ることになりました。


<参考サイト>
真田広之だから「ハリウッド」口出しOK
http://news.goo.ne.jp/article/nikkangeinou/entertainment/p-et-tp0-130906-0009.html




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