2013年6月26日水曜日

図書館は読書生活のキーステーションだ!

今回は、「月1,500円からの読書生活術」シリーズの番外編として、図書館活用術を取り上げたいと思います。題して「図書館は読書生活のキーステーションだ!」です。

図書の分類記号を少しだけ知っておこう

 ご存知の通り、図書館の蔵書は原則として、0から9までの分類番号(日本十進分類法)順に並んでいます。
 分類記号は原則三桁表示であり、最初の数字が大分類、次が中分類、末尾が細分類を示しています。通常、この三つの数字を「類」「綱」「目」と言います。
 例えば、分類記号323は、3類(社会科学)の2綱(法律)の3目(憲法)を示します。
 
■ 自分の読書の「偏り」を自覚しよう

 利用者が圧倒的に多いのは、9類(文学)でしょう。人それぞれ、借りる本には分類上の偏りがあるはずです。私自身の場合は、いちばん多いのは3類(社会科学)、つづいて2類(歴史地理)、6類(産業)といったところでしょうか。
 自分の読書の偏りを知ったところで、たまには異分野の本を読んでみるのも良いものです。個人的には、4類(自然科学)の本には、課題の設定の仕方、課題へのアプローチの選び方、といった点で参考になるところが甚だ多いと思っています。 

■ 新着図書コーナーで関心の薄い分野に触れる
 
 異分野の本を読もう、と思ったとき役立つのが図書館の「新着図書コーナー」です。私自身も、このコーナーを見て、あまり読む機会のない0類(総記)、1類(哲学宗教)、4類(自然科学)などの図書を手に取って見るようにしています。
 最近読んだものでは、『エピソードでつかむ生涯発達心理学』(岡本祐子ほか編著・ミネルヴァ書房 2013)が平易な記述でとっつきやすく、ためになりました。ちなみにこの本は、分類記号143でした。

■ 新着図書コーナーの定点観測でわかること

 「新着図書コーナー」を定点観測しておりますと、出版傾向にそのときどきの世の中の重大関心事が大きく反映していることがわかります。
 最近感じるテーマは「原発」「放射能」。それは、自然科学や産業の分野にとどまらず、反原発運動を現象として捉えた場合には社会学、放射能被害に係る心のケアといった面では医学、といった分野的広がりを持ちます。
 とりわけ個人的に関心を持ったのは『危機の憲法学』(奥平康弘・樋口陽一編著・弘文堂 2013)でした。この本は、東日本大震災を契機に顕在化した憲法上の諸問題に取り組んだ法律書で、「原子力災害と知る権利」についても論じています。

■ 分類記号100番以下が面白い

 注目すべきオススメの分野は、0類(総記)です。とくに、
  002 知識、学問、学術
  007 情報科学
  014 資料の収集、資料の整理、資料の保管
  019 読書、読書法
  070 ジャーナリズム、新聞
 のカテゴリーには、好奇心を刺激してくれる面白いものが多く、重宝しています。










2013年6月13日木曜日

履歴書ではわからない「潜在的な業務センス」

 人材確保といえば、二言目には「即戦力」という時代になって久しいですね。すべてに余裕を失った時代を反映する現象なのかもしれません。

 いまここに、同じ学校を出て、同じ会社に入り、同じ職場に配属されて同じ仕事を同じ年数経験した二人の若者がいるとします。
 彼らの履歴書の内容は自然と似たものになりますし、顕在的な業務スキルもきっと同程度でしょう。
 しかしながら、彼らの業務感覚というか、潜在的な業務センスには、数年で大きな差が生まれている可能性があります。そうした差を生むのは、それぞれが感じた問題意識の質と量の違いだと思います(つきつめれば、生まれ育ちの違いなのかもしれません)。

 このような差は、経験や顕在的業務スキルに着目しただけでは決してわかりません。彼らを従前と違う業務やより高度な判断を要する業務につけたときに、一気に顕在化することになります。
 
 本来であれば、経験に寄りかからず異なる視点で物事を捉えられるか、知識経験の乏しい業務を遂行するためにどのような工夫をするか、といったところが採用にあたって重要なチェックポイントにされるべきだと思います。しかしながら、知識経験ベースでものを考える人は、他人を評価する時も知識経験の多寡を基準にしがちです(それ以外の評価基準を持たないからでしょう)。そのような人物に、これら二人の若者の差を見抜くことは困難だと思います。

 「意欲的でチャレンジ精神にあふれ、専門的知識と技術を持ち、コミュニケーション能力の高い人材を月給二十万円で雇いたい」というような話を聞くと、飯を食わない嫁ならもらってもいい、と言ったケチな男の昔話を連想します。でも実は、そんな人材も確実にいるのです
 問題は二つだけ。
 一つは、その人の高い意識と能力を採用側が見抜けるか、ということ。
 もう一つは、そんな人物に身を投じさせるだけの魅力が企業にあるかということです。



 

2013年6月9日日曜日

月1,500円からの読書生活術(4)

今回は、「ステップ4;読んだ記録を残す」について書きます。

■ アウトプットを前提にするとインプットの質は高まる

 本の内容をコンパクトにまとめる、ブックレビュー(書評)を書く等、アウトプットすることを念頭に置いて読むと、ただ漫然と読み進めるより得るものは多いです。反面、あまりに「これに関する情報を得よう」という目的意識が強すぎると、文脈を読み間違えるというか、行間の含意が読み取れなくなることには注意すべきです。
 自らアウトプットした情報は、後日自分自身にとってもインプット情報となります。さらにアウトプットを繰り返すことで、アウトプットの質が次第に高まることは、経験上ご存知の通りです。

■ 通読し終わった本は宝物である

 前回、「
このフレーズいいな、ここは重要だな」と思った箇所には、ぜひともマーカーで印をつけておくべきだ、と書きました。次回参照がきわめて容易になるからです。
 要点をノートするなら、読み進めながら記録するより、一度通読したのちマークした箇所を振り返りつつ記録するほうが、全体構造が把握できるぶん、より有益だと思います。
 何より、「たしかこの本にはこんなことが書いてあった」ということがわかっているというのは、必要に応じて情報にアクセスする際、とても大きなアドバンテージです。
 このようなことから私は、通読し終わった本、とりわけマーカーで印をつけた本は大切に保存しています。

■ 読んだ記録をどう残すか ① 書評として残す

 誰かに読まれることを念頭に置かないとしても、その本の資料としての価値はどの程度か、自分にとってどのような点で有益か、第何章あたりが本書の白眉(勘所)か、といった情報を記録しておくことはたいへんいいことだと思っています。

 私自身は「ブクログ」というウェブサービスに登録していて、気が向いたもののみ書評を残すことにしています。
 ちなみに「ブクログ」とは、会員個々が書籍情報を登録して自分の仮想本棚をオンライン上に作り、蔵書管理やレビューを行うことができるウェブサービスで、無料で登録して利用することができます。

■ 読んだ記録をどう残すか ② リストとして残す

 前掲の
「ブクログ」には、読みたい本をリストアップしておき、読み終えた本はその旨記録することにしています。
 また図書館で借りた本は、「貸出記録票(レシート)」を専用のノートに順に貼っていくことで管理しています。後日、借りた本を購入したり、再度借りたりするときに便利です。

■ 読んだ記録をどう残すか ③ 図表にして残す

 マインドマップにしたり、箇条書きにしたり、表にまとめたりすることで、知識としての定着度も理解度も、資料としての活用可能性もグンと上がります。
 下の表は、前回ご紹介した、西股総生 『戦国の軍隊: 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』の中で、日米開戦を例にとって言及されていた「戦略の階層性(戦略・作戦・戦術・戦技の関係)」について、私がパワーポイントで整理したものです(これはこれで、後日当ブログで採り上げたい興味深い内容です)。

 


2013年6月3日月曜日

起業する理由は何ですか?

 先週末から今週末にかけて、「おおいた学生起業家育成講座」(大分大学主催・大分県委託事業)が開催されています。
 昨年に引き続き、私が講師を担当させていただくことになったのですが、4日間にわたる本講座の冒頭、私は受講者のみなさんに次のように語りかけました。


 起業家の人たちが起業するのはなぜでしょう?
 実現したいビジネスアイデアがあるからでしょうか?
 それとも、ただ起業したいから起業するのでしょうか?

 どっちが成功しそうだという気がしますか?(受講者から、ビジネスアイデアがある人の方が成功しそう、という声があがる)
 そうですね、そんな気がしますよね。
 どちらの方が成功に近いか、私にもわかりませんが、周囲を見回す限り「起業したいから起業した」人たちがわりと順調にきているのが目につきます。

 それは、どうしてだと思いますか?

 私が思うに、それは「とにかく起業したい」人たちは、起業するために必要なのに、自分に足りないものを認識し、それを順次手にいれて行っているから。
 起業のネタであるビジネスアイデアがまだないこともあるでしょう。開業資金が足りないこともあるでしょう。でも、起業というゴールをイメージ豊かに描けば、いまの自分に欠けているスキルや経験、人脈、お金、その他もろもろがはっきり見えてきます。

 私自身も「起業したいから起業した」人間です。私には足りないものが多かったので、起業を志してから起業するまで長い年月がかかってしまいました。

 本講座でみなさんがこれから学んでいく事業計画(ビジネスプラン)は、設定したゴールに向けて足りないものを順次獲得していくための、いわばロードマップみたいなものです。

 長丁場ですが、それを一緒に勉強して行きましょう。


 起業はビジネスアイデアありきでなくてもいいのだ、というこの問題提起は、受講者のみなさんにかなりの驚きをもって受け止められたようでした。
 確固たるアイデアをもっていても、起業しない人はしないものです。他方、アイデアもなしに起業を目指す人は、起業のネタ探しに躍起になるはずです。「このビジネスを応用できないか」「外国で成功しているこのビジネスを日本でもやれないか」などと。
 
 問題意識はアイデアの母。いいアイデアが出てくるまで待っていては、埒が明きません。