2012年6月29日金曜日

不動産鑑定士のクルマ考


 先日、長年連れ添った愛車に別れを告げ、18年ぶりに新車に買い替えました。
 従前と同じ国産SUV、但し今回はディーゼルです。まだ満載のアクセサリー類をほとんど使いこなせていませんが、この18年間のクルマの進歩には、驚嘆しているところです。
かねてからBMWのファンであった私としては、3シリーズが乗り換えの第一候補、アウディA4クワトロが第二候補だったのですが、経済的理由と以下の「不動産鑑定士のクルマが備えるべき要件」を総合的に勘案した結果、上記の選択となりました。心残りが全くないと言うとウソになりますが、まずは順当な選択であったと思います。


 思うに、私のような田舎の不動産鑑定士は、クルマの使い方に次のような特徴があります。
1 バス・鉄道網が発達していないので最重要(というよりほとんど唯一)の移動手段である。
2 移動距離が比較的長い。ゆえに好燃費や疲労の少ないことが重要となる。
3 屈曲の多い狭隘道路を通行する機会も少なくない。ゆえに大型車は好ましくない。
4 台風・降雪・路面凍結時に長距離移動を強いられることがある。
5 未舗装・高勾配の林道を走破できる能力が求められる。
6 わだちが深く刻まれた未舗装道路を通行することがある(最低地上高は高めに)。

 2WD車で久住山の雪の坂道が登れず立ち往生した経験や、早朝に路面凍結した山間部の沈み橋をおずおずと渡った経験等から、今回は上記4~6を特に重視し、国産SUVにしました。足ながら付け加えれば、現地に外車で乗り付けることが望ましくないこともありうる点も、併せて考慮した結果です。
 あとは、新しい相棒がその真価を発揮できるようなお仕事が戴けることを祈るばかりです。とはいえ、買って間もない新車に早速キズは付けたくはありませんが。




2012年6月11日月曜日

ひとは話のどこを聞いているか


会社の営業支援システム導入を主導し、定着させ、営業部門の生産性向上に貢献した社員がいるとします。その直属の上司が、彼の人事考課書に「無遅刻無欠勤で、まじめに業務に取り組む頼もしい人材である。」と書いたら、人事課長であるあなたはどう感じるでしょうか。

この上司は、確かに彼にプラスの評価を与えていますが、彼の業績やそれを可能ならしめた彼のスキルや徳性には全くと言っていいほどふれていません。ふつう、この人事考課書からまず読み取れるのは、「この上司は彼のことを快く思っていないのだな」ということでしょう。

このように、われわれはある情報を耳にしたとき、その内容を言外のニュアンスをも含めたコンテキスト(文脈)として把握しています。ところが、情報が専門的、個別具体的、散文的になっていくと、たいていの人はコンテキスト(文脈)ではなく、キーワードに反応する傾向が高まるような気がしています。そして、そのキーワードにかつて自分が与えた意味内容でもって、発言全体を解釈しようとします。

ですから私は、中小企業支援の現場で、ある企業の経営課題の切り分けを行う際、「マーケティング上の課題だ」とか「事業承継の問題だ」といった表現はなるべく用いず、具体的なタスクの形で『○○を△△しましょう』と伝えるようにしています。それでもなお「ということは、ITの問題ですよね?」と聞き返されることもありますが、簡単に同意を与えるべきではないとも思っています。

 それは、ひとたび「IT」「事業承継」というキーワードに変換された経営課題は、仮にその人の理解が「IT=ウェブサイト」「事業承継=税制上の措置の活用」であったとしたら、その理解レベルまで矮小化されかねないからです。こういう整理が必要だ、という個別のタスクを具体的に伝えないと、経営支援が本質を逸脱するリスクはきわめて高い、というのが現時点での私の認識です。

どうやら、誰かの発言の意味内容を正確に理解するには、地アタマの良さと、虚心坦懐に人の言うことに耳を傾ける姿勢と、心の余裕と、コモンセンスのいずれもが必要なようです。そしてこのことは、口頭でのアドバイスがいかにあやふやなものか、ペーパーにまとめることがいかに重要かを示唆しているとも思われます。