2012年3月30日金曜日

「お墨付き」の真価を問われる「お墨付き産業」

 不動産鑑定業は「ソリューション産業」であると同時に「権威産業」「お墨付き産業」の側面を有しています。
 鑑定評価書というお墨付きによって、価格の正当性を示し、もって当事者を合意に導いたり、トラブルを未然に防止したりといったソリューションを提供する産業、という言い方もできるでしょう。

 いわゆる「かんぽの宿」問題は、かかる不動産鑑定業の本質に関わるような重要な問題を提起しています。

 『国土交通省は26日、旧日本郵政公社が依頼した宿泊・保養施設「かんぽの宿」の一括売却に絡む不動産鑑定で不当な評価をしたとして、不動産鑑定士4人を業務禁止や戒告の懲戒処分、不動産鑑定業者1社を戒告の監督処分にしたと発表した。また13人を文書注意、1社を口頭注意の行政指導とした。国交省によると、鑑定士らは平成19年8月末にかんぽの宿の評価書を公社に提出。事前に公社に示した原案から大幅に価格を引き下げた理由に合理性がない上、実地調査していない物件や、つじつまの合わない記載があり、不当な鑑定評価と判断した。鑑定士が原案を示した際、公社側は「早期に売却したい。今の市場で売れるのか再検討してほしい」と伝えたという。』(2011.8.26産経ニュース)

 本件では、依頼者側から「低めに評価してほしい」という要請、いわゆる『依頼者プレッシャー』があったことが非常に大きく採り上げられています。
 しかしながら、何らかのソリューションを目的に鑑定評価を依頼している依頼者が、「なるべく安ければ(高ければ)いいな」という期待を持つのはむしろ当然です。依頼者プレッシャー、とひとことに言いますが、相当に執拗かつ悪質な強要があった場合はともかく、プレッシャーが不当鑑定の理由になるのならば、「鑑定評価額は不動産鑑定士の主体的意見である」という前提そのものが覆ってしまいます。

 依頼者の意向に盲目的に従っておいて、「お墨付き」としての真価が問われたときに合理的な説明資料とはならず、「依頼者プレッシャーの結果です」となったのでは、何のための鑑定評価かわかりません。

 「もう少しコストダウンできない?」というクライアントの真意は、「粗悪品を作れ」ということでは決してないでしょう。不動産鑑定士は、依頼者に寄り添い、適切なソリューションを目指しつつも、合理的な価格のありどころを依頼者にこそ示せなければならないと思います。
 本件が「不動産鑑定業の重大な危機」を示していることは間違いありませんが、「ソリューション産業」としての不動産鑑定業は、遅まきながら「お墨付き」の中身をも問われ始めたことで、一層成熟する機会を得たのかもしれない、とも思うのです。
 (2011.9.23)

0 件のコメント:

コメントを投稿