2013年9月9日月曜日

プレゼンテーションの本質~言語版「北風と太陽」

 9月8日早朝(日本時間)、2020年の第32回夏季五輪・パラリンピック大会の開催都市が東京に決定しました。その興奮はいまだ冷めやらぬ趣きで、テレビはオリンピック関連の話題で持ちきりです。

 本日の「ひるおび! (TBS)では、招致成功のキーポイントとなった最終プレゼンテーションを取り上げていました。

 高円宮妃久子さまの後をうけた最終プレゼンテーションのトップバッターは、走り幅跳びでパラリンピック3度出場の佐藤真海(さとうまみ)さんでした。

 明るく快活だけど、それでいてやわらかな調子でスピーチを始めた彼女は、事故で脚を失ったくだりではやや声を落とすなど、ともすれば「元気だけど単調」になりがちなこの種のスピーチを感情豊かだけど自然に表現し、見事に「自分を救ったスポーツの力」を訴えることに成功していました。

 これをテクニックの勝利とか、プロによる入念なコーチングの成果とか言うのは、間違いにないにせよ、どこか本質を突いていない気がします。

 「ひるおび!」のコメンテータたちも口々に彼女のスピーチを称えていましたが、その中でもっとも「佐藤真海のスピーチのよさ」を的確に言い表したのは、三雲孝江さんの大要次のようなコメントだろうと思いました。

 『もし彼女がもっと強い調子で自らの主張を訴えていたとしたなら、彼女が持つ明るくやわらかなムードが生かされず、説得力が削がれていただろう』

 かつて丸谷才一は、文章の本質を達意自分の考えが十分に相手に理解されるように表現すること)であると指摘しました。

 プレゼンテーションも同じでしょう。スピーカーが自分の言いたいことをありったけまくし立てて、相手に伝わるはずがないのです。

 聴き手のもつ共感能力を刺激するのは、朗々たる大きな声でも、大言壮語でも、美辞麗句でもありません。

 では、何が聴き手の共感能力を刺激するのか。
 それは、スピーカーが自分自身とテーマとの関わりを「もっとも自分らしく」表現することです。佐藤真海さんがしたように。
 聴き手は、自分の身におきかえて考えざるを得なくなります。そこにこそ共感が生まれますし、強く印象に残ります(感極まって絶句したスピーカーって印象に残るではありませんか)。

 IOCロゲ会長がスピーチを終えた佐藤真海さんに囁いたほめ言葉もまさに「インプレッシブ」だったとのことです。


<参考サイト>
秘策!佐藤真海プレゼンが五輪引き寄せた






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