2013年9月12日木曜日

借地借家法第10条第2項の重み

 最近、借地借家法第10条第2項(借地権の対抗力等)という条項の重みについて考えさせられる案件がありました。

借地借家法第10条は次のようにいっています。

1  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

2  前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

 同条1項により借地権者は、借地権そのものについては登記をしていなくても、借地上に所有する建物について登記を有する場合には、未登記借地権について「対抗力」が認められることになります。

 しかしこの場合、もし借地期間中に建物が滅失したときは、建物滅失以前に目的土地に権利を取得した第三者には従来どおり借地権を対抗できるものの、建物滅失後目的土地に物権や土地賃借権を得た第三者には借地権を対抗することができないことになってしまいます。

 そこで同法は、かかる場合に借地権者を救済するため、同条2項を置いて、一定の要件を満たせば、建物が滅失したときでもなお、対抗要件が維持されることとしたわけです。

 「滅失」には、自然災害によるものも、人為的なものも含むとされています(澤野後掲268ページ、根拠は示されていません)。だとすれば、朽廃目前の借地権付建物といえども、潜在的には再築により新築の借地権付建物に変身する可能性を持っていることになります。
  
 このように、同条2項の経済的インパクトは極めて大きいのですが、新法(借地借家法)における新設規定であることや、借地権慣行の未成熟な地で業務を営んでいる関係上、情報量が少ないことに困惑させられているのが実情です。

 とまれ、同項をめぐる不動産鑑定評価上の論点は、これがもたらすロス(経済的損失リスク)とベネフィット(経済的利益)をどう定量化するかということでしょう。すなわち、ロスとベネフィットは表裏一体であるものの、保守的観点からは、底地所有者の不利益を、借地権者の将来利益よりも大きくみることが妥当ではないかと思っています。

 上記の通り、私はまだ借地借家法第10条第2項について知見らしきものをほとんど持っていません。そこで、現実の法現象としてどのようなことが起こっているか等、何かご教示をいただけるきっかけになればと思い、投稿した次第です。

参考図書
澤野順彦編 『実務解説借地借家法』 青林書院 2008
稲本洋之助・澤野順彦編 『コンメンタール借地借家法第3版』 日本評論社 2010










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